起業の夢を持ちながらも、資金不足に悩む方は多いと思います。
「事業のアイデアがあり、起業したいけどお金がない!」
「お金がないから起業できない…」
という状況は、起業を考える方々が直面する大きな壁です。
しかし、自己資金がなくても創業融資を受けられる可能性は存在します!
この記事では、自己資金ゼロ、もしくは少ない自己資金から少しでも創業融資を受けやすくするための5つの方法と注意点をわかりやすく解説します。
この記事を通して、創業融資を受けることを検討中の方のお力となりましたら幸いです。
目次
1.自己資金ゼロの人は創業融資の審査が通らない!?
自己資金とは、自分の手元にあるお金のことを言います。
他人から借りた、いずれ返さなくてはならないお金は自己資金ではありません。
多くの人が抱く誤解の一つが、「自己資金がなければ創業融資は通らない」というものです。
確かに自己資金の有無は審査の一つの要素です。
一般的に、融資を受ける際は希望の融資金額の最低でも10分の1程度の自己資金が必要だといわれています。
国の政策金融機関である日本政策金融公庫のホームページでは、以下のように記載されています。
「自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要になります。公庫が融資先の創業企業を対象として実施した調査(「新規開業実態調査」)によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度となっています。」
ただ、自己資金の金額だけで融資の可否が決まるわけではありません。
できるだけ自己資金を増やす努力をすることが大切なことではありますが、自己資金が少ない状態で融資を受けやすくする方法をこの記事ではお伝えしていきます。
2.ポイント①【まずは自己資金と認められるものを整理しよう!】
「起業したいけど、自己資金が少ないからどうしよう…」と不安になったり、落ち込む前に、まずは自己資金として認められるものを把握しておきましょう。
自己資金が全くないと思っていても、実は手元の資産の中に自己資金と認められるものが存在している可能性があります。
「これも自己資産なんだ!」と思われるようなものも認められるので、融資へのチャンスを広げるためにも必ずチェックしておきましょう。
自己資金で認められるものの例は以下の通りです。
現金預金(貯金)
資本金
退職金
相続したお金
生命保険の解約金
不動産・持ち物を売却したお金
みなし自己資金
第三者割当増資
「みなし自己資金」とは、創業準備のために既に使った費用であっても自己資金とみなされることです。
例えば、開業前に事業に必要な設備や機器などを購入した費用は、みなし自己資金とすることができます。
手元には実際にお金はありませんが、事業のための支払であることを証明するため、領収書等の記録があれば自己資金の一部として認めてもらえる可能性があります。
また、「第三者割当増資」とは、個人、法人を問わない第三者を対象に有償で新株を発行して増資する方法です。
一般的には企業の事業拡大に必要となる資金調達のために利用されます。
一方、自己資金と認められないものもあるので注意が必要です。
他の金融機関からの融資金、借入金
親族や知人から借りたお金
タンス預金
「タンス預金」とは、銀行などの金融機関に預けず、自宅等で保管しているまとまった金額の現金のことです。
タンス預金は、お金の流れが説明できないため自己資金とは認められません。
基本的に自己資金と認められるものは、自身の財産のうち、出所が明確なものです。
自身の口座の預貯金通帳に記載のあるお金などの履歴を確認できるお金は、自己資金として認められる傾向があります。
3.ポイント②【自己資金を増やす方法は?】
自己資金と認められるものがわかったものの、それでも自己資金が足りない!という状況もありますよね。
そこで、自己資金を地道に貯める方法ではなく、一気に資金を増やす方法を以下にまとめました。
現物出資を申告する
「現物出資」とは、いわゆる資本金の出資にあたり、金銭以外の財産を出資することです。
創業時にもともと所持していたもので必要な設備をまかなう場合、それらを自己資金として認める場合があります。
現物出資の対象となる財産は、自動車、土地や建物などの不動産、機械設備、OA機器(パソコンなど)、有価証券、事業で扱う商品や原材料などがあります。
みなし自己資金を申告する
前述にもある通り、みなし自己資金とは、設備や事業などにすでに投じている資金のことを言います。
事業のために購入した備品や機械設備、店舗の敷金や内装費用などはみなし自己資金として認められることが多いですが、交際費や広告費などは認められないことがありますので注意が必要です。
家族や親族からお金の贈与を受ける
起業を考える場合、家族や親族から資金の援助を受ける場合もあると思います。
このときに贈与されたお金は自己資金と認められることが多いです。
ただし、贈与されたものであることが証明できる「贈与契約書」を用意する必要があります。
また、親族からの「借り入れ」は自己資金にはなりませんのでご注意ください。
保険を解約する
保険の解約返戻金も自己資金として認められます。
掛け捨てではないタイプの保険を解約すると返戻金が発生します。
その際に証明となる資料を保険会社に発行してもらうことを忘れないようにしましょう。
資産を売却する
自己資産を売却して得られたお金も自己資金として認められます。
不動産や株式などを売却することで、現金化することができます。
この場合には売買契約書や領収書、口座明細書などの書類が必要になります。
退職金をもらう
創業や起業をするために、今まで勤めていた会社を退職することもあるでしょう。
長年勤めていた会社であれば退職金をもらえる職場も多いと思います。
退職金も自己資金として認められますので、退職金の源泉徴収票などを事前に準備しておくとよいでしょう。
出資者を募る
自分だけの資金で足りない場合は、他の人に協力してもらう方法もあります。
出資者を募る方法としては、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル、他企業からの出資受け入れなどありますが、創業時に活用が現実的なものとしては、比較的新しい手法の「クラウドファンディング」でしょう。
実現したい事業を掲げ、インターネットなどから共感を得た個人からお金を集めることができるものです。
ただし、その起業家自体や事業内容に強い特徴や、ストーリーがない場合や目標金額に達成できない場合があるので注意が必要です。
4.ポイント③【自己資金なしで創業融資を受ける方法はあるのか?】
自己資金を増やす方法はわかりましたが、それでも自己資金を集めることが難しい場合もあります。
結論から言うと、自己資金で創業融資を受ける方法はあります。
その方法を以下にてご紹介します。
自己資金がほぼゼロでも利用できる融資制度を活用する
日本政策金融公庫には、自己資金がほとんどなくても利用できる融資制度があります。
以下にその融資の種類を紹介します。
■新規開業資金
こちらは自己資金が少ない状況でも申し込むことが可能な制度です。
2024年3月の新創業融資の廃止に伴い新規開業資金の内容が一部変更となりました。
それにより、もともと存在していた「創業資金総額の1/10以上の自己資金」の自己資金の審査基準が撤廃されました。
ただし、自己資金要件が撤廃されたからといって、審査が緩くなったわけではありません。日本政策金融公庫の担当者は、融資の可否を決める際に自己資金を判断材料の一つとして考慮します。
■中小企業経営力強化資金
こちらも自己資金の用件はありません。
融資限度額が7,200万円と非常に大きく、特別利率が適用されるため金利が低いことが特徴です。
こちらは以下の条件のいずれかに該当する方でないと申込できません。
⑴次のすべてに当てはまる方
⓵経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方
②事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方
⑵次のすべてに当てはまる方
①「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している方または適用する予定である方
②事業計画書を策定する方
⑶独立行政法人中小企業基盤整備機構によるハンズオン支援を受けている方
⑷取引金融機関の支援を受けて経営者保証免除計画を策定し、経営改革に取り組む方
■挑戦支援資本強化特例制度(資本制ローン)
これは、スタートアップや新事業展開、海外展開、事業再生等に取り組む方の財務体質強化や、ベンチャーキャピタル、民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援する融資です。
この融資は、以下の条件を満たしていないと申込できない特徴があります。
⑴地域経済活性化にかかる事業を行うこと
⑵税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること
説得力のある創業計画書や事業計画書を作成する
創業融資に申し込む際には、創業計画書や事業計画書の提出が求められます。
始める事業の販売戦略や資金繰りの計画などを具体的な数字で示すことが、融資の審査判断の重要な材料になります。
これにより自己資金が少なくても創業収支を受けられる可能性が高まりますのでしっかりと作り込みましょう。
同じ業界の経験を持つ
日本政策金融公庫などの融資制度では、融資の判断材料として事業計画の実現可能性を重視するものもあります。
同じ業界での経験があることで、より現実的で実現可能性の高い事業計画を立てることができます。
さらに審査時には、申請者の業界知識や経験を考慮してリスク評価を行います。
その際に経験があれば、事業成功の可能性が高いと判断される傾向があります。
税理士などの専門家に相談する
創業融資の中には、税理士や公認会計士、商工会などの「認定経営革新支援機関」の指導を受けて事業計画を立てることを推奨しているものがあります。
自己資金ゼロの場合は、前述にもある通り、創業計画書や事業計画書を入念に作り込む必要があるので、専門家に相談するのがおすすめです。
専門的な知識と今までの経験により、融資を受ける際に押さえておくべきポイントを熟知しているのが税理士です。
税理士等の専門家のアドバイスを受けて融資申請すると、融資を受けられる可能性が高まるでしょう。
5.ポイント④【自己資金なしで創業融資を受けるときのデメリット】
上記までは自己資金なしでも融資を受けられる方法をお伝えしてきました。
しかし、自己資金なしで融資を受ける際には、主に以下の3つの注意点を念頭に入れておくことをおすすめします。
そもそも融資の審査が通りにくい
一般的に、自己資金がないと返済能力が低いとみなされ、融資の審査が通りにくくなります。
先程からお伝えしているように自己資金の要件がない融資制度はありますが、やはり多少の自己資金は準備しておくことをお勧めします。
融資額が少なくなる
基本的には自己資金が少ないと、受けられる融資額も少なくなります。
希望の融資額が高額の場合は、ある程度は自己資金も必要になることを念頭に入れておきましょう。
金利が高くなる
融資の金利は、融資額や返済期間、自己資金の金額などによって変動します。
自己資金がなければ、金利が高くなる傾向があります。
事業リスクが増える
融資とは借金であり、必ず返済しなければなりません。
自己資金がない状態で事業を始めると、初期段階から負債を抱えることになり、事業が軌道4に乗らない場合のリスクが高くなります。
融資オプションの制限がある
自己資金についての条件が定められている融資制度には申し込めない可能性があります。
これにより、利用できる融資オプションが制限される可能性があります。
このように、自己資金なしで融資を受ける場合は上記のようなデメリットを理解した上で検討することが必要です。
6.ポイント⑤【自己資金なしで創業融資を受けるときの注意点】
自己資金なしで創業融資を受ける際のデメリットを理解した上でも、やむを得ず自己資金なしで融資に申し込みたいケースもあるかもしれません。
そのときは、次の点には必ず注意しましょう。
見せ金をつくらない
「見せ金」とは、金融機関や知人などの第三者から一時的に資金を借り、資金を実際の金額よりも意図的に多く見せかける行為です。
見せ金は虚偽の報告であり、違法となります。
審査中であれば、見せ金であると判断された時点で審査に落ちます。
審査後に不正が発覚した場合は、融資の返還を求められたり、将来的に融資が受けられなくなる可能性があります。
タンス預金
「タンス預金」は、自宅に保管されている現金の俗称です。
冒頭でも述べましたが、タンス預金は自己資金として認められません。
創業融資を申し込む際には、直近6ヶ月分の通帳の提出を求められます。
起業するためにどのようにして資金を貯めてきたか確認するためです。
しかし、タンス預金にはお金の流れを証明する手段がなく、本当に本人の資金であるかの証明が困難です。
よって計画的に貯めたお金であっても、タンス預金は自己資金で認められないのが現実です。
また、タンス預金は相続税や贈与税の課税対象となりますので、隠し財産とみなされると、重いペナルティが課される可能性があります。
自己資金を貯める際は、銀行や信用金庫などの預金口座に預けるようにしましょう。
7.まとめ
自己資金とは、自分の手元にあるお金のことです。
銀行などの金融機関から融資を受ける際は、自己資金も審査基準になります。
よって、融資を考える際には、自己資金として認められているお金の種類を把握しておくといいでしょう。
自己資金を増やす方法や、自己資金なしでも申し込むことができる融資はありますが、多少でも自己資金を準備しておくことが非常に重要です。
熊本創業融資相談室では、自己資金の正確な状況を知るためのサポートや、融資の手続きに関するサポートなどにも幅広く対応しております。
「起業したいけど自己資金がない!」とお悩みの方は、ぜひ一度、熊本創業融資相談室までお問合せくださいませ!
Comments