今回は、個人事業主として事業を行っている皆様に向けて、創業融資についてご説明したいと思います。
「個人事業主なのに、融資なんて受けられるの?」と疑問に思っている方も多いかもしれませんが、実は、事前にしっかりとした準備をすれば、多くの選択肢があります。
本記事では、個人事業主が利用できる創業融資の種類や特徴、そして審査を通過するためのポイントを詳しくお伝えします。
これから新しく起業を目指す方に、ぜひご覧いただけましたら幸いです!
目次
1.個人事業主が利用できる創業融資の種類
まず、最初にお伝えするのは、個人事業主の方々が利用できる創業融資の種類です。
個人事業主が利用できる創業融資はさまざまありますが、特に利用しやすい代表的な制度を以下で紹介していきます!
日本政策金融公庫の新規開業資金
日本政策金融公庫が提供する新規開業資金は、個人事業主の創業時に最も利用されている融資制度の一つです。
「新規開業資金」では、女性、若者、シニアの方や、廃業歴等があり創業に再チャレンジする方、中小会計を適用する方など、幅広い方の創業・スタートアップサポートしています。
この制度の主な特徴は以下の通りです。
無担保・無保証人で最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)まで融資を受けられる
金利は比較的低く、1.0%~3.0%程度
創業前はもちろん、事業開始後7年以内の方でも利用可能
自己資金が創業資金総額の10分の1以上必要(一部例外あり)
新規開業資金の魅力は、創業時の資金調達の壁を大きく下げてくれる点にあります。
特に、無担保・無保証人という条件は、個人事業主にとって非常に心強いですよね。
通常の銀行融資では、担保や保証人が必要となることが多く、それが創業の障壁となっていました。
しかし、この制度を利用することで、そうした心配がなく事業をスタートさせることができます。
さらに、創業前でも申し込みが可能という点も大きなメリットです。
多くの融資制度では、ある程度の事業実績が求められますが、この制度では創業計画や事業計画がしっかりしていれば、まだ事業を始めていなくても融資を受けられる可能性があります。
日本政策金融公庫の新規開業資金を利用することにより、創業時の初期投資を十分に行うことができ、事業の成功確率を高めることができるでしょう。
自治体による制度融資
次に、各都道府県や市区町村が提供する制度融資についてご紹介します。
制度融資も、個人事業主が利用できる創業融資の選択肢の一つです。
制度融資の特徴は以下の通りです。
各地域によって制度の内容が異なる
金利が低く、1.0%~3.0%程度のケースが多い
信用保証協会の保証付きで、審査のハードルが比較的低い
自治体による利子補給や保証料補助がある場合もある
制度融資は地域や自治体によって内容や条件は異なります。
よって制度融資を利用する前には、自分の住んでいる地域や起業を考えている地域の自治体のホームページや窓口で詳細を確認するとよいでしょう。
また、自治体の制度融資は、地域金融機関との連携で行われることも多いです。
そのため地域に根ざした事業展開を考えている方にとっては、将来的に事業に有利な関係を構築できるという面でもメリットがあります。
地域の金融機関との良好な関係は、事業拡大時の融資や経営相談など、長期的な事業運営において大きな助けとなるでしょう。
信用金庫・信用組合による融資
さらに、地域密着型の金融機関である信用金庫や信用組合も、個人事業主向けの融資を行っています。
これらの融資制度の特徴は以下の通りです。
地域経済の活性化を目的としているため、地域に根ざした事業に適している
信用保証協会の保証付き融資とプロパー融資(金融機関独自の融資)がある
金利は2%~3%程度が多い
小口の融資にも対応している
信用金庫や信用組合は大手の銀行と比べて、地域の経済事情や産業構造をよく理解しているため、より柔軟な融資判断が期待できます。
また、融資後のフォローアップも手厚いことが多く、経営相談や販路の拡大支援など、資金面以外でのサポートも受けられる可能性があります。
特に、創業間もない個人事業主にとっては、こうした総合的なサポートは非常に心強いですよね。
例えば、地域の商工会議所や商工会との連携イベントに参加する機会が得られたり、地域の他の事業者との交流できる機会が得られるサポートもあります。
これらは、事業の成長や新たなビジネスの創出にも繋がるチャンスがあります。
また、信用金庫や信用組合は、地域の中小企業や個人事業主向けの融資に特化していることが多いです。
そのため大手銀行では対応が難しいような小規模な融資にも柔軟に対応してくれます。
創業初期の運転資金や小規模な設備投資など、比較的少額の資金需要にも応えてくれるため、あなたの事業規模に合わせた資金調達が可能となります。
2.個人事業主が創業融資を受ける際に重視されるポイント
さて、次は創業融資の審査を通過するために知っておきたいポイントについてお話します。
以下のことを押さえておくことで、よりスムーズに進めることができるでしょう!
事業計画の妥当性
まず何より重要視されるのは「事業計画書」です。
この書類がしっかりしていないと、審査で落ちてしまうこともあります。
事業内容や特徴を明確に説明し、市場分析や競合分析を行った上で、自分たちの強みをアピールすることが大切です。
また、具体的な数値目標とその根拠を書くことも忘れないようにしましょう。
さらに、資金計画や返済計画も詳細に記載することで、自信を持って審査に臨むことができます。
事業計画書を作成するときのポイントは、具体性と実現可能性のバランスです。
夢や理想を語るだけでなく、それをどのように実現していくのか、具体的なステップや、人材、設備、資金等の必要な資源を明確に示すことが重要です。
また、市場や競合分析を通じて、自社の位置づけや差別化できるポイントを明確にすることも審査員からの印象を良くする要素となります。
そして数値目標を設定する際は、根拠を示すことが重要です。
例えば、「初年度の売上目標1,000万円」という数字を掲げる場合、それがどのような計算に基づいているのかを明示することで、その目標の妥当性や実現可能性を示すことができます。
また、リスク分析とその対策についてもしっかり言及しておきましょう。
事業を行うには必ずリスクが伴います。
しかしそれを認識し、適切な対策を講じる姿勢を示すことで、経営者としての資質をアピールすることができます。
創業分野の経験・実績
次に重視されるポイントは、自分が創業しようとしている分野での経験です。
同じ業種で働いた経験があれば有利になります。
そして、その経験年数が長いほど評価されやすくなります。
経験のアピール方法としては、単に「○年間の経験がある」というだけでなく、その間に得た具体的なスキルや知識、成果などを示すことが効果的です。
例えば、
「飲食店で10年間勤務し、店長として売上を前年比120%に伸ばした実績がある」
「食品衛生管理者の資格を取得し、衛生管理体制の構築に貢献した」
といった専門性のアピールなどが考えられます。
中には、自身の未経験の分野で新規事業を立ち上げたいと思われる方もいるでしょう。
その際には、未経験でも関連するスキルや経験を示すことで、良い印象を与えることができます。
未経験の業種のアピール方法としては、例えば、異なる業界での営業経験を持つ人が小売業を始める場合に、「顧客ニーズを把握する力」や「コミュニケーション能力」といったスキルを活かせることを示すと良いでしょう。
さらに、業界内での人脈やネットワークもポイントになることもあります。
今まで築き上げてきた業界内での人脈は、仕入れ先の確保や販路開拓、業界動向の把握などに役立つため、事業の安定性や成長性を示す要素となります。
具体的には、「業界団体での活動経験」や「取引先との良好な関係」などをアピールすることができるでしょう。
自己資金の準備状況
そして、自己資金も重要なポイントです。
日本政策金融公庫の新規開業資金では、具体的に必要な自己資金額について決まっていません。
しかし、現実としては自己資金が多ければ多いほど有利になる傾向があります。
目安としては創業資金総額の2割程度を自己資金として準備すると良いでしょう。
そして、その蓄えた自己資金の出所が明確なことも大切です。
そのため、預金通帳などで証明できるようにしておくと良いでしょう。
自己資金の準備は、単に金額の多さだけでなく、その資金をどのように蓄えてきたかも重要です。
例えば、長期間にわたって少しずつ貯蓄してきた資金は、創業への強い意志と計画性を示すものとして高く評価されます。
一方、急に大金が入金されているような場合は、その出所や安定性について疑問を持たれる可能性があります。
また、自己資金の使い道も明確にしておくことが大切です。
単に「運転資金として」というだけでなく、具体的にどの部分に充当するのか(例:初期の広告宣伝費、店舗改装費、在庫仕入れ資金など)を示すことで、事業計画全体の中での自己資金の位置づけを明確にすることができます。
さらに、自己資金以外の資金調達方法についても検討しておくと良いでしょう。
例えば、クラウドファンディングやエンジェル投資家からの出資など、融資以外の資金調達方法を併用することで、事業の実現可能性を高めることができます。
これらの取り組みは、金融機関に対しても事業への熱意を示す材料となります。
過去の信用情報
最後に、自身の信用情報も見逃すことができないポイントです。
クレジットカードやローンなどで支払い遅延がないか確認し、税金や公共料金も滞納しないよう注意しましょう。
過去に債務整理や自己破産した場合は、不利になる可能性がありますので、日頃から良好な信用情報を維持することが大切です。
信用情報は、個人事業主の場合、事業主個人の信用情報が直接的に審査に影響します。
そのため、日頃からの金銭管理が非常に重要になります。
具体的には、クレジットカードの支払いを遅延なく行うことや、住宅ローンなどの返済を確実に行うこと、税金や社会保険料の納付を適切に行うことなどが挙げられます。
また、過去に信用情報に問題があった場合でも、その後の改善するための努力を継続していることを示すことが重要です。
例えば、債務整理後に計画的な返済を続けている場合や、自己破産後に新たな債務を作らず堅実な生活を送っている場合など、過去の問題をクリアし、現在は安定した状態にあることをアピールできれば、審査にプラスに働く可能性があります。
さらに、取引先との関係性も信用情報の一部として捉えられることがあります。
例えば、長期にわたって安定した取引関係を維持している仕入れ先がある場合、そのことを示すことで事業の安定性や信頼性をアピールすることができます。
3.個人事業主が創業融資を受ける際のメリットとデメリット
個人事業主が創業融資を利用することには、メリットとデメリットがあります。
利用する前に、以下のメリット・デメリットを理解しておくことも非常に重要です!
メリットは?
自己資金だけでは不足する資金を調達できる
事業の立ち上げや拡大を迅速に行える
融資を受けることで、金融機関からの経営アドバイスも得られる
融資返済を通じて、資金管理の習慣が身につく
融資実績ができることで、将来的な資金調達がしやすくなる
デメリットは?
返済義務が生じるため、事業が軌道に乗らない場合のリスクがある
金利負担が発生する
融資申込から実行までに時間がかかる場合がある
審査に必要な書類作成に時間と労力がかかる
融資条件によっては、事業の自由度が制限される場合がある
これらのメリットとデメリットを十分に理解した上で、創業融資の利用を検討することが大切です。
4.個人事業主が創業融資を受けるための準備
それでは次に、個人事業主が創業融資を受けるための具体的な準備についてお伝えしていきます。
以下のポイントをしっかり押さえていただき、スムーズな申請に繋げていきましょう!
事業計画書の作成
何より大切なポイントは、事業計画書の作成です。
事業計画書や創業計画書では。明確なビジョンを書き出すことが重要です。
特に数値目標や市場分析などは、具体的なデータを盛り込むことで説得力を持たせます。
例えば、「3年後に売上1億円」という目標を掲げるなら、その根拠となる市場規模や顧客ターゲット、販売戦略などを詳細に記述しましょう。
また、競合他社の分析も重要です。
自社の強みや差別化ポイントを明確にし、どのように競合と戦っていくのかを具体的に示すことで、事業の実現可能性をアピールできます。
さらに、資金計画も詳細に記載しましょう。
初期投資、運転資金、そして返済計画まで、具体的な数字とともに示すことが重要です。
これにより、融資金額の妥当性や返済能力を金融機関に示すことができます。
ただ、本業もこなしながら事業計画書を作成するのは、時間も労力も必要になりますよね。
そこで、事業計画書などの融資の審査に関わる重要な書類は、専門家からアドバイスを受けながら作成すると、より説得力のあるものになる可能性が高まります。
税理士や地域の商工会議所、中小企業診断士などに相談するのも良いでしょう。
必要書類の準備
次に必要書類ですが、一般的には事業計画書や資金計画書、それに納税証明書などさまざまな書類が求められます。
個人事業主の場合、以下のような書類が必要となることが多いです。
事業計画書
資金計画書
収支計画書
住民票
納税証明書(所得証明書)
預金通帳のコピー
見積書(設備購入の場合)
賃貸借契約書(店舗や事務所を借りる場合)
ただし、融資を受ける機関によって異なる場合がありますので、早めに確認しておくことで焦らず進められます。
特に、納税証明書や住民票などの公的書類は取得に時間がかかる場合があるので、余裕を持って準備しましょう!
自己資金の準備
前述にもありますが、自己資金を蓄えておくことも大切な準備です。
でも、自己資金は短期間で用意することは難しいですよね。
例えばクラウドファンディング等を活用して事前に資金を集めるのも一つの方法です。
これは単に資金を集めるだけでなく、事業のPRにもなり、潜在顧客の反応を見ることもできます。
また、家族や知人からの出資を検討するのも一つの案でしょう。
ただし、この場合は契約書を交わすなど、後々のトラブルを防ぐための対策も忘れずに行いましょう。
そして、思いもよらないものが自己資金に該当する場合もあります。
何が自己資金に当たるか、事前にしっかり確認しておきましょう。
信用情報の確認と改善
前述にもありますが、信用情報についても確認しておきましょう。
問題点があれば早めに改善策を講じておくことが大切です。
具体的には、クレジットカードの支払いや公共料金の支払いを滞りなく行うことはもちろん、過去に延滞があった場合は、それ以降きちんと支払いを続けていることをアピールできるよう、記録を残しておくと良いでしょう。
また、個人事業主の場合、事業主個人の信用情報が重要視されます。
そのため、個人的な借入れや支出についても慎重に管理する必要があります。
不要な借入れは避け、計画的な資金管理を心がけましょう。
専門家への相談
不安な点や疑問点については、専門家への相談がおすすめです。
税理士や中小企業診断士などからアドバイスを受けることで、より強固な事業計画を立てることができます。
また、地域の商工会議所や商工会なども、創業に関する相談窓口を設けていることが多いので、積極的に活用しましょう。
これらの専門家は、単に書類作成のサポートだけでなく、事業が発展し、継続するためのアイデアや戦略についても客観的な意見を提供してくれます。
また、地域の経済動向や業界の最新情報なども得られるため、事業計画の精度を高めることができます。
さらに、こうした専門家とのネットワークは、創業後も継続的な経営相談や情報収集の場として活用できます。
長期的な視点で、こうした関係性を構築していくことも重要ですし、精神的な心強さアップにも繋がりますよ。
5.創業融資を受けた後の注意点
最後に、融資をうけることができた後にも気をつけておくべきポイントがあります。
以下の点を押さえておけば、安心して事業を運用できるでしょう。
資金管理の徹底
融資で得た資金は、計画通りに使用することを心掛けましょう。
そして、使い道を明確に管理し、不必要な支出を避けましょう。
例えば、融資金専用の口座を設けて管理するのも一つの方法です。
また、日々の収支管理も徹底しましょう。
特に創業初期は予想外の支出が発生することも多いため、細かな収支管理が欠かせません。
クラウド会計ソフトなどを活用して、リアルタイムで財務状況を把握できるようにしておくと良いでしょう。
返済計画の遵守
融資資金の返済スケジュールは必ず守りましょう。
これは融資を受けた金融機関との信頼関係を築く上で非常に重要です。
もし返済が困難になりそうな場合は、早めに金融機関に相談しましょう。
多くの場合、早期の相談であれば返済条件の変更などの対応が可能です。
また、余裕がある場合は繰り上げ返済を検討するのも一つの案です。
これにより総返済額を減らすことができ、長期的には経営の安定に繋がります。
定期的な事業計画の見直し
市場環境や自身の状況によって、定期的に事業計画を見直し、新しい戦略へ柔軟に対応しましょう。
例えば、四半期ごとに計画と実績を比較し、必要に応じて計画を修正するといった具合です。
このときに、当初の計画からの変更点とその理由を明確にしておくことが重要です。
これにより、金融機関への報告や将来の融資申請の際に、経営判断の根拠を示すことができます。
金融機関との良好な関係維持
定期的に進捗を報告しつつ、金融機関との良好な関係性を築いていくことで、将来的な安心感にも繋がります。
例えば、半年に一度程度、事業の状況報告を行うなどしてコミュニケーションを取ると良いでしょう。
また、困ったことがあれば早めに相談するなど、オープンな関係性を保つことが大切です。
金融機関は単に資金を提供するだけではなく、事業のパートナーとして捉えることで、より良い関係性を構築できますよ。
6.まとめ
以上のポイントを押さえていれば、個人事業主でも創業融資は十分可能です!
日本政策金融公庫や自治体制度など、多彩な選択肢がありますので、自分に合ったものを選びましょう。
またしっかりとした準備と計画さえあれば審査にも通過しやすくなりますよ。
不安な気持ちもあるかもしれませんが、一歩踏み出すことで新しい世界が広がります。
このチャンスを生かして自信を持って挑戦してください!
あなたの成功を心から応援しています!
熊本創業融資相談室を運営する税理士法人ストラテジーでは、無料で融資相談を受け付けております。
創業融資のみならず、事業に係わる融資のお悩みであれば、いつでもお気軽にご相談いただけますと幸いです。
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